2023/11/19
【設計事務所のデザインコラム】#18デザイン大国デンマークをほじくる
デザインで有名な国と言えば?・・・建築・インテリア業界では北欧デンマークを外す人はあまりいない。有名な企業、デザイナーをざっと上げると、
フリッツハンセン、カールハンセン&サン、PPモブラー、ウェグナー、ヤコブセン、フィンユール、パントンなど正直無数にいると思う。
話は変わりますが、「だである調」で書いていたけど、どうも自分の言葉にならないなと思い、「ですます調」を含めた話し言葉で書きたいと思います。混在するので文章としてはチグハグになることをお許しください。
「だである調」にした理由はこちらのリンク
話を戻して、
じゃあなんでこんなに有名な人達や企業が多いのか?
このデザイン大国デンマークを紐解くことで、なにかデンマーク人のマインドの中にヒントがあるのでは?と思い、頭を整理しながら結論を出してみようと思う。
デンマークって聞いて何を思い浮かべるだろう?
これといった特徴は無いように見えて、割と身近にデンマーク由来は存在した。
レゴブロックや携帯とかのブルートゥースとかはデンマーク由来だし、マッチ売りの少女やみにくいアヒルの子などのアンデルセンの童話もデンマーク。インテリアにおいて有名人ばかりいるこのデンマークについて、掘り下げるために、まずはその国自体の背景を知ろうと思います。
デザイン業界でよく聞く「ヒュッゲ」はデンマーク由来です。日本語訳は難しいと言われてるけど、「気の合う仲間や家族とゆったり居心地の良い雰囲気で時間を過ごすこと」などと定義づけされている。
デンマークのデザイナーは昔から良い家具をデザインすることで、良い暮らしをつくるという頭があったからなんだよなぁ。
暮らしを良くすることを大切にしたデンマークのデザイナーたちは、その背景に国の特性があったといわれているんですよねぇ。
首都はコペンハーゲン、400以上の島々からなる海に囲まれた小国で、昔はスウェーデン、ノルウェー、ドイツの一部を支配するような大国だったんだけど、現在は九州くらいの国土面積しかない。
この九州くらいの面積に約580万人、東京は1400万、大阪は880万人、愛知は750万人くらいなので日本に比べるとかなり人口密度は薄い。
また日本よりかなり北に位置しているため、夏場は涼しく、昼の時間も長い。そして冬は暗くて長い夜が続く。
だけど北大西洋からの暖かい空気が流れてくるのでそんなに寒くなく、氷点下になる期間も長くない。
雪もあまり降らず、高い山もないのでスキーとかは人工ゲレンデでやったりする他、ハンドボールやバドミントンとかの室内競技が盛り上がっている。
こういう環境が室内を重要視するデンマークデザインのバックグラウンドになっているんじゃないかなって思います。
現在デンマークの面積の1/7が森林に覆われてる。古くから造船業や木工が盛んなデンマークの人々にとって森は必要不可欠。
だけど昔は農地拡大のため森林占有率が2〜3%くらいまで落ち込んだ時期があった。それに歯止めをかけるため、法律が作られて伐採が規制され、植林が推奨されてきた結果、ヨーロッパトウヒが積極的に植林された。
モミの木と並んでクリスマスツリーとしてよく使われる針葉樹なんだけど、厳しい環境でも育ちやすく、成長が早いので植林に適していたんだよねぇ。
昔はオーク(ナラ)、ビーチ(ブナ)、アッシュ(タモ)、メープル(カエデ)などの広葉樹が自生していたんだけど、伐採などで減少し、いまではビーチ(ブナ)だけがストック材として残っていて、あとは輸入に頼ってる状況です。
社会サービスが充実しているデンマークは医療費、出産費、教育費が無料、その分高い税金を払っている。
例えば日本の消費税に当たる付加価値税は25%、自動車に関してはこの付加価値税に加えて、150%の自動車取得税がかかります。むちゃむちゃ高いですよね。
医療費が無料と言ったけど、デンマークはホームドクター制度が定着していて、よっぽど重大な病気じゃない限り、例えば風邪などは「栄養のあるもの食べてゆっくり休んでね」という感じで処方箋も出してくれないらしい。
このあたりのメリハリが税金を浪費せず、安心して暮らせる社会をつくってるのかもしれませんね。
また、教育費に関しては小学校から大学まで公立だと全て無料。
私立でも負担は日本に比べるとかなり軽いです。
このようにデンマークは国民全員がお金を出し合って若者の育成を国全体で行っているともいえるかなと思います。
世界幸福度ランキングでも2022年では2位になっている。ちなみに日本は54位。社会そのものを良くしようとするデンマーク人と日本人はそもそもの価値観が違うのかも。
収入格差も少ないし、選挙の投票率もデンマークは90%近くになっている。共に国を発展させるという精神が根強いのかもしれませんね。
このように社会や国を大切にするデンマークがより良い暮らしをするために、「デザイン」という定義をお金を稼ぐということだけじゃなく、ちゃんと人々にとって有益なものと位置付けているのかもしれません。
だからこそデンマークデザインの特徴である
シンプルで飽きが来ない
機能的かつ実用的
繊細な職人気質
が、生まれるんじゃないかなぁ。
厳しい環境という諸条件→抗う(あらがう)じゃなく、受け入れる
人口密度と400の島国→人との距離が遠い→コミュニケーションが大切
森を壊した過去→資源を無駄にしない→資源を大切にするということは、そこから生まれる商品もしっかり考える必要がある
高額な税金→独り勝ちせず、還元する精神
幸福度が高い→小さなことでも幸せと感じる
コンプレックス商品は大抵うまくいく理由は、人のストレスを改善するからだと思う。
僕が思うに、デンマークという国のもともと持っている厳しい環境が、初期段階では「コンプレックス」として位置付けられ、この共通するコンプレックスを改善するために、個人ではなく全員で動いたのではないかなぁ。
全員で動けた理由としては気軽に話すことのできない距離だからこそ、人と会った時の特別感がちょっと僕たちと違う気がする。
人を大切にし、環境に順応しようとすることで「現在」を生きている。
マインドフルネスが高いのだろう。その「一瞬」を大切にしているから、ものづくりに関しても、今作っているこの「一瞬」に力を入れて、「最後のねばり」があるのではないだろうか・・・と思う。
色々見解があると思うけど、過去や未来よりも「現在」を大切にしているのかなぁって。
ただ違う角度でこのデンマークを見た時、もし現代のSNSやネットが整備されてる時代で、国の転換期を迎えた場合、果たしてどうだろう?
良くも悪くも情報が入りずらい時代だからこそ、力を合わせることができたと思う。現代では大量の情報を手軽に入手できるので、選択肢が非常に多く、現実の厳しい環境等に向き合わないことも考えられる。
選択肢が無いとストレスを感じ、選択肢が多いとこれもまたストレスを感じる。
大切なことは個人の適正な選択肢の枠をみつけて、その枠の中で過ごすことだと思う。設計者の役割はどうやらこの枠を創り出すことではないかと思った。
クライアントの「枠」を創るために、提案側の僕たちは選択肢の幅を広く持った方がいい。
設計においては住宅だけ、店舗だけ、小規模だけ、中規模だけとかじゃなくって、toCもtoBも建築規模も種類も関係なく幅広くできることが、提案する「枠」の精度を上げることだと思う。
ただ自分の枠を広げすぎて、「ひっちゃかめっちゃか」にならないようにだけ注意したいかなぁ。
デンマークの話が、なんだか自分に言い聞かせる精神論みたいになってしまった。ただ頭を整理整頓するツールとして、文章を書くことは重要と気付いたので、良しとしよう・・・
今回はここまで。
ありがとうございました。
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