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2023/11/02

【設計事務所のデザインコラム】#1部屋名を取り除く(住宅)

 

#1名古屋を拠点にインテリアにこだわる設計事務所 CURIOUS design workers【建築家のデザイン思考】

 

今回は住宅の設計の中で、様々な条件により部屋数を確保できない場合、または「部屋名」の用途だけではない考えをお話しようと思います。

 

日本の建築は○○LDKといったように、部屋数とLDKが1つあるという間取りの作り方が当たり前のようになっています。


そもそも○○LDKというのは「食寝分離」(食事と寝るところを分ける)から始まり、1955年に設立した日本住宅公団によって団地がつくられていく中で生まれた言葉だと言われています。それから約70年位の間、未だにその考えが続いていると思うと、いかにその考えが日本にマッチしていたかがわかりますよねぇ。ただ近年目まぐるしい時代の変化の中で、暮らし方が変わってきてるため、今までになかった空間も増えているのです。


例えば「備蓄倉庫」

 

 

防災の観点からこの部屋ができたり、宅配ボックス用のスペースが出来たりなど、必要な部屋の数も増えてきているように感じています。さらには法律も変わり、このスペースの一部は容積率に算入しないという法律もできてきました。


テクノロジーの発展、災害などの危機管理などで法律が変わり、建築物も変わっていく中で、「部屋名」の役割は何なのかを今一度考えるのもデザイン活動のひとつかなぁって思っています。

 

・「玄関」の可能性

 

どの建物にも必ずある「玄関・エントランス」。一番の用途としては靴をしまい、LDKに行くまでの動線、来客者を出迎える場所として、今でも重要視する方は多くいます。


プランニングの際はLDKの広さと玄関の広さのバランスはチェックします。LDKの広さに対して異常に玄関が広い、もしくは狭いと家のバランスが崩れるからです。これは構造とかそういう視点ではなく、人の感覚の話でして、そこで違和感があるとLDKとかに対して「なんか頑張った感」が出すぎてしまい、「動線」としての大切な役割である「人の感情を整える」という行為が無くなってしまうためです。

 

「玄関」や「廊下」を無くして部屋を広く取りたいという方は多くいますが、面積的にどうしても広さが取れない場合などは「天井高」を操作することで解決できます。シンプルに考えて広さというものは「幅・奥行」そして「高さ」で構成されているからです。


また「玄関」を動線としての役割だけと決めつけると、この考えが生まれやすいかなと思います。その場合は部屋名を一旦外して、入口でありくつろぐ場などというような考えでアプローチすると良いのではないかなって思います。

 

・セカンドリビングという名の玄関

 

 

平面的に広いワンフロアのLDKの場合でも、家族の目線はどうしても合ってしまいます。普段はそれでいいのですが、たまに一人になりたい時、ただ気配だけは感じていたい時にセカンドリビングというスペースは有効的です。

 

だけどそんなスペースを確保できないという方は大勢いると思うので「要素の組み合わせ」をすると解決します。例えば玄関の広さを少しだけ広く取って「セカンドリビング」の要素を付加してあげる。それにより視線を外してくつろぐスペースが生まれながら、玄関も広くなるため,人を招きやすい空間になります。

 

土地面積に左右されない考え方を持つことが大切かもって思います。

 

・工作スペースとしての玄関

 

 

玄関は土足が基本のため、室内ではやりたくないことも気兼ねなくできます。例えば子供と一緒に工作する、アトリエ的な空間が欲しい、ただ使うかどうかわからないので部屋をつくるのは躊躇するなどといった場合、玄関を広げて工作スペースにすると良いかもしれませんね。


床が土間コンクリート等の仕上げのため、お掃除も水を流せば良いというメリットもあります。こうしたことが家族の個性を具現化した空間に繋がると考えています。

 

 

住み始めてから用途が変わることもあります。工作スペースが基本と考えてデザインしましたが、2年後お伺いしたときには植物を生成する場所として利用していました。新しい趣味ができてそれを楽しむ場所として利用されているこの土間玄関について、建築家としては非常にうれしく、また用途を断定せずに曖昧にすることの重要性を改めて認識しました。


「余白」がある間取りには「余白」のある暮らしが生まれ、その余白に新しい趣味をはめ込むというように、人の楽しみはデザイン次第だと思います。


建築ってホント素晴らしいなぁって。


このお宅は寒いエリアの住宅なので玄関の土間の下にもかなりしっかり断熱を入れました。2年後の雪が降る日にご自宅に招待してくれて、寒さについても大丈夫とのことだったので快適性も重視してよかったなぁって思った記憶があります。好きなことをやる時に小さなストレスを取る事、それは空気環境や湿度、温度も大切なのでここには配慮していきたいですよね。


「空気感をデザインする」とはこういうことですよねぇ。

 

・読書スペースとしての玄関

 

 

「玄関」は土間スペースとホールから構成されるのですが、その割合を極端に変えた事例です。インテリアにこだわりのあるクライアントへのアプローチとして玄関を「居場所」として構成しました。


南からの光を取り入れて気持ちの良い空間、そこで読書を楽しむ、セカンドリビングというよりかは書斎的なイメージでしょうか。


ここでのデザインポイントは玄関収納(靴入れ)をどうするか?です。


私のアプローチは下記の写真です。

 

 

こういうインテリアに合う収納は置き家具が一番だと考え、クライアントの好きなアンティーク家具を置くことを提案しました。

 

収納量としては少ないですがセレクトショップのように厳選したものだけを収納することで豊かな暮らしを実現できると思います。注意しなければいけないのはクライアントによってアプローチを絶対に変えなければいけないということです。

 

家族構成や趣味、デザインのこだわり、断捨離具合など、対話を重ねてしっかりヒアリングするからこそ、この方に合ったデザインが生まれ、それが個性となります。わかりませんが、もしかしたら実際は収納が足りなかったかもしれません。

 

だけどそのストレスより玄関にお気に入りのアンティークがおいてあり、そこから靴を取り出す行為の方が満足度が高い場合もあります。「デザイン」は「価値の創造」なので、住むことを楽しんでもらえたらいいなって思ってます。

 

人は「言葉」に支配されやすいので、固定観念を一旦横において頭をクリアにしながらデザインをするとうまくいくかもって思ってます。

 

今回はここまで。
ありがとうございました。

 

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