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2023/11/04

【設計事務所のデザインコラム】#3「モスクランプ」を造った日のコト/照明にこだわり始めたルーツ

 

#3名古屋を拠点にインテリアにこだわる設計事務所 CURIOUS design workers【建築家のデザイン思考】

 

C.D.WORKERSがインテリアにこだわっていることは以前にもお話したんですが、僕自身は特に「照明」が好きで、こだわっています。

 

このこだわりのルーツをちょっとだけお話すると、
まだ僕が大学3年でどこかのゼミに入らなければいけない時に、特にやりたいことが無いなぁって思ってたんですが、昔から不思議な空間が好きで、「遺跡」に興味があったため、どこかを専攻するなら「地学」かなぁって思い、「地圏環境学」のゼミに入りました。(実は建築学科じゃないんですよねぇ)

 

そこからいろいろな心境の変化や現実を目の当たりにして、建築に至るのですが、相変わらず「遺跡」のたぐいは好きで、世界遺産を色々まわっていました。



何千年もの昔の人が現在のテクノロジーもない中で、考えられない建築物を建てることに魅了されっぱなしだったのですが、25歳の時に遺跡といえば・・・の王道といえるエジプトに行ったときのことです。



カイロ、ルクソールなど有名どころの遺跡は見つくし、エジプトのファストフードともいえる「コシャリ」を食べてお腹を壊していた時、遺跡見学を少し休憩して、イスラム教の礼拝堂である「モスク」に行きました。
観光気分の軽い気持ちで行っただけなのですが、中に入るとすさまじい感動を覚えたことは今でも忘れません。

 


モスクの中ってこんな感じになっているんです。

 

 

天井が非常に高く、そこからワイヤーで吊るされた円形の下地にいくつものペンダント照明が吊るされていたんです。
 

照明一つ一つはすごく高価なものではないのですが、それの集合体が一つの大きなシャンデリアの形状になっていて、「照明ってホントすごいんだなぁ」「インテリアの感動ってこういうことなんだなぁ」って。


この時からです、僕が照明にこだわりだして、光の出方だけではなく照明のフォルムや見せ方に興味が沸いたのは。
そしていつかこの照明を日本で実現させたいと思い続けていました。


そこから数年が立ち、建築設計事務所「C.D.WORKERS」をつくる時に、どうせならこのモスクランプを事務所につくろうと思いたちました。

 

「モスクランプ」が素敵と思う要因を紐解くと、

 

  • 天井が高い空間にコードを長く落として宙に浮いているようにする

  • できるだけ床に近い位置までもっていく

  • シンプルな照明を連続的に配置し、一つの照明は光量を少なくする

  • 想像以上の大きさの円形を造り、人にスケール感を見失わせる

 

だと考えました。



倉庫を借りて、インテリアをダイナミックに表現することを計画していたので、天井高、照明の大きさは空間として耐えれるなぁ・・・ただこのモスクランプをどうしようかなぁって思った時に、もともとアンティークが好きで、バイヤーとのつながりもあったため、最初はエジプトやトルコからモスクランプを輸入しようと思っていたのですが、「モノづくり」が得意な日本に設置するのであれば、せっかくだしMade in Japanでいこうと思い、奈良にいる有名なガラス工芸の作家さんにコンタクトを取りました。

 

 

今でも覚えているのですが、貿易関係の友人と私の二人で奈良のガラス工房にいって、このモスク照明を依頼しに行きました。



待ち構えていたのは「ザ・職人」のような60代後半の方で、そこで繰り広げられる光景はまるで「圧迫面接」のような感じでして・・・



そこで僕のインテリアに対する思い、このモスクの照明が自分のルーツであること、それをMade in Japanで造りたいことをじっくり話をさせていただき、「それならば」と造ってくれることになりました。
 


その後初めて知ったのですが、合計48灯吊る予定のこのモスク照明のガラスシェードはロットが少ないため、金型ではなく木型でひとつずつ焼いていくということで、その手間に驚かされたと同時に強いリスペクトが沸きました。

 

 

そして強力な作家さんを味方につけた僕たちは何度もシェードのサイズや湾曲したフォルムの角度などを打ち合わせしていったのです。

 

 

 

 

 

 

試作品も完成していよいよシェードを本格的に焼きはじめ、また現場では鉄を溶接して下地を造り準備万端な状態に。
そして完成したのがこの写真です。

 

 

 

 

外周が直径7.2m、内径が3.6mの円型モスクランプの完成です。

 

 

 

このモスクランプを作成したことで、照明の役割やデザインとしてうまく見せる方法がかなり明確にわかりました。

 

  • 空中に浮かぶ「浮遊感」を演出することで照明の力を最大限発揮できる

  • そのためには照明のフォルムと同じくらいコード長さのバランスが重要

  • 天井高が高い空間の場合、照明器具を面として捉えることができるため、直下にいてもこもり感があり、気持ちが安定する

この感覚は8年たった今でもいきており、例えばworksの「CATEGORY」でこの手法を使っています。

 

 

こちらは戸建てリノベーションの事例で天井高が非常に高い中で、キッチンやダイニングに「居場所」をつくるためにライン照明を吊り、浮遊感を演出しながら間延びしない空間を計画したものです。

 

こう考えるとどこで何が役に立つかってわからないものですよねぇ。
エジプトのモスクで体感したことが、日本の戸建て住宅のリノベーションに活かされること・・・昔の文献などを紐解くということは大事だなぁって最近改めて思いましたので、少しばかり昔話をさせていただきました。

 

今回はここまで。
ありがとうございました。

 

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