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2023/11/12

【設計事務所のデザインコラム】#11「言葉」をデザインし、空間デザインにはめ込む(リノベ)

 

#11名古屋を拠点にインテリアにこだわる設計事務所 CURIOUS design workers【建築家のデザイン思考】

 

デザインを成果物として捉えるのではなく、その過程もクライアントと共有することで、ネガティブなことがポジティブに変わることがあると思う。

 

今回は少し変わった内容をお話しようかなって。
イニシャルコストを掛けずに、クライアントに喜んでもらうデザインはなにがあるのか・・・


それは「言葉」だと思う。

 

「言葉」をデザインするということを意識すると問題解決や想像以上の喜びを与えることができる。

 

僕は言葉選びに気を使っている。伝え方ひとつでクライアントの心配事を解決してあげれたり、逆にこちら側がめちゃめちゃ頑張って出した成果が全く響かなかったり。

 

この「言葉」を空間デザインに落とし込むにはどうしたら良いか?
なんとなく皆さんわかってるかなぁ
「ストーリー」。要は「過程をデザインしてあげること」だよねぇ。

 

具体的な事例をC,D,WORKERSのマンションリノベーションの事例でお話すると・・・

 

・「靴を育てる」と表現するくらい靴が好きなご主人
・奥さんは僕たちと同業で1級建築士、
 今後の趣味の一つとして「金継ぎ」をやってみたい

 

とのことだった。

 

金継って茶碗が割れた時に金で継ぐこれだよねぇ

 

画像出典:京焼・清水焼通販「松韻堂」HPより

 

一度割れたものを繋ぎ合わせることで、新品以上の風合いが出る金継茶碗ってなんだかリノベーションに似ているよねぇ

 

金継紋柿の蔕 抹茶茶碗 良二 - 京焼清水焼専門店 松韻堂京都の三年坂にある京焼清水焼の店、松韻堂の通販サイト。抹茶茶碗、ご飯茶碗、湯呑、酒器や箸置き、鳥獣戯画の器や天目作家作品。shoindo.com

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靴が好きなご主人と、建築が仕事で将来金継ぎをやってみたいという奥さんに似合う玄関ってどんな感じだろうと考える中で、まず玄関を「居場所」として成立させようと思ったんだよねぇ。

 

通常マンションの玄関土間って半0.5〜1帖くらいだと思うけど、靴を育てるためには広さがほしいので、一部屋分くらいの約6帖のスペースを確保し、そして土間の仕上げを伸縮目地を入れない薄塗りのコンクリートにすることで、クラックが入るようにと考えた。

 

 

ラフプラン

 

最初のラフプラン時に、「建築と金継ぎを掛け合わせましょう、クラックが入ることを楽しみにする暮らしはどうですか?」とプレゼンしてみた。

 

建築士っていろんなタイプがいるけど、割と完成しきったものより、実験的な空間や少しずつ変化させていきたい人の方が多い気がしたんだよねぇ。

 

実際にクライアントも面白がってくれて採用になり、この考えで現場を進めることになった。

 

スケルトンからの全面リノベだったので、玄関もコンクリート打ち直しだったんだけど、現場で指示出すときに、
「いい感じでクラック入るようにお願い!」と言うと、
「えっ」みたいな表情でこっちを見る監督の顔が今でも忘れられない・・・

 

そりゃそうだよねぇ。普通はいかにクラックが入らないかを考えるから。でも土間コンクリート仕上げを冷静に考えると、大小はあるけどクラックはいずれ必ず入るからねぇ。

 

それを「嫌だなぁ」と思わせるのか、「クラックが入った!やったー!」と思わせるかは設計者からの「言葉」とクライアントの「柔軟性」によるものだと思うなぁ。

 

こうして無事に引渡しした時の玄関がこちら。

 

 

玄関(土間コンクリート一発打ち)

 

通気性のために靴は棚に置く

 

マンションの玄関にしてはすごく広いよねぇ。
ちなみになんだけど、横にあるカーテンはキャンプ道具とかを隠すためのものなんだけど、これを扉にしなかったのは理由があって・・・

 

この素材が倉敷の帆布(ハンプ)なんだよねぇ。しかも蝋引きしているのでちょっと硬い。何度も開け閉めしていくうちに、自分の癖が帆布の皺になってオリジナルの表情を醸し出せるということで、一緒に生地を探して、カーテン屋さんに無理言って帆布蝋引きをカーテンのように縫製してもらったものなんだ。

 

倉敷帆布|国産帆布生地|倉敷帆布株式会社 コーポレートサイト倉敷帆布|国産帆布生地|倉敷帆布株式会社 コーポレートサイトwww.kurashikihampu.co.jp

 

ひとつひとつにストーリーがあると日常の空間が少しずつ変わるので面白いよねぇ。

 

話を戻して、完成してから1年後、クライアントからこんな写真が送られてきた。

 

 

「ようやくしっかりしたクラックが入りました!」というメール

そしてその後のメールで・・・

 

 

「金継ぎしてみました!」とのメール

 

すごく素敵に仕上げたなぁって。コンクリートのグレーに金がよく合う。
もともと手先が器用な職業のクライアントだったので、こんなにきれいになったんじゃないかなぁ。

 

この事例はC.D.WORKERSの「craft counter」というプロジェクトなんだけど、クライアントの丁寧な暮らしをしたいという性格から生まれたデザインだと思う。

 

ちなみに引渡し後、3か月くらい経ってから連絡が来て、
「あの〜、クラックが入らないんですが・・・いつ入ります?」
・・クラックが入らないというクレームを生まれて初めて受けました(笑)

 

クライアントの性格や暮らしを深堀して、ストーリーを考えて、言葉をデザインして伝えること、これが設計者やデザイナーに必要なスキルの一つだと思うんだよなぁ。

 

だからこそ普段から線を引く前にコンセプトを固めることが重要だと思う。(C.D.WORKERSはプラン作る前にコンセプトメイクをします)

 

「言葉」のデザインをしっかりやろうと思ったきっかけは「コンペ」なんだ。仕事を取りに行くコンペじゃなくて、出来上がった建築物を評価してもらうコンペね。(○○賞 受賞とかのコンペ)


どんなに優れた建築物でも、言葉とセットじゃないと良さが伝わらない。僕が言葉にこだわり、コンペを取りに行く方針にしたのは住宅も店舗も自分の建築物や空間の良さをはっきりわかってもらうためかな。要は「長所」をわかりやすく理解してもらうため。人が自分のことを見つめなおすように、自分の所有している空間の良さを認識してもらうため。そっちの方が単純に嬉しくない?って思う。


(CURIOUS design workersの受賞歴はこちら)

 

デザインは世に出して、評価されるところまでがデザイン業務なので、しっかり伝えていきたい。

 

今回はここまで。
ありがとうございました。

 

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