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2023/11/13

【設計事務所のデザインコラム】#12要望を妄想する(オフィス)

 

#12名古屋を拠点にインテリアにこだわる設計事務所 CURIOUS design workers【建築家のデザイン思考】

 

B to B の場合、具体的な要望ではなく会社のブランドイメージやざっくりした要望のみで依頼されるケースが多い。これは会社の規模が大きいほど顕著だ。こういう時にどう考えるかのお話。

 

これはCURIOUS design workersの過去のオフィス実例(日本空間デザイン賞入選)をもとに順を追ってお伝えしようと思う。

ということで、さっそく・・・

 

プロジェクトのスタートは全国に支店を持つ大きな企業の大阪支社の改装計画。7階建てビルの1〜3階をほぼ使っていなかったため、何か利用したいということでスタートした。

 

改装前

 

このプロジェクトはディレクションする会社が入っていたので、そこが用途をどうするかを相談し、社員が使う商談ルーム、ミーティングルーム、そして貸会議室としての機能を持たせるということになった。

 

自社のミーティングルームでありながら、不特定多数の人が利用する貸会議室となると、絶好の企業ブランドをアピールする場ともなるので、そこを軸として考えていくことになったが、
要望は「パッケージ感あふれる空間」というものだった。


製造業の会社で段ボールや商品を梱包するパッケージを製造していたからこその要望なのだが、要望が抽象的なため、細分化する必要があると考えた。

 

「パッケージ×ミーティング」を考えた時に、まずミーティングは何のためにするのか?を深堀すると、
そこにはコミュニケーションや新たなアイデアを発見する場と位置付けることがでる。

 

次にパッケージは何のためにあるのか?
それは「大切なもの」を衝撃から吸収す
るため、まとめるために段ボールや袋で包み、配送する。

 

この2つを組み合わせると、「大切なもの」というのは「アイデア」であり、それを世の中に「伝える」ということを「配送する」と位置付けれるなぁって。

 

これを空間デザインに落とし込むと、人と人が会話をして生み出したアイデアを打ち合わせブースでパッケージする。そしてそのブースを移動式にすることでパッケージされたアイデアを配送するということを計画した。

 

計画時パース

 

一人で運べる4人掛けブースを木材の小口を見せながら、段ボールの小口(フルート)とリンクさせて製作した。

 

一人で運べる移動式ブース

 

移動式にすることで通常は位置をバラバラにして密を避け、大人数で会議をするときはブースを1カ所に集め、連結させる。そしてセミナーなど大人数を集める時はブースを部屋の端に寄せて広々と使う。

 

 

バラバラで密を避ける配置

 

 

1カ所に集めて会議ができる配置

 

 

端に寄せて広々と使う配置

 

こうしてフレキシブルに対応でき、パッケージ会社のブランドイメージを視覚化した会議室をデザインした。

 

さらにもうひとつデザインを加えようと考えた。
この会社にはパッケージデザインするデザイナーチームがある。同じデザインをするもの同士、共に何かつくれないかなぁって。



結局デザイナーって自分が苦労してつくったものはどんな分野でも愛着があり、そこにはストーリーがある。その製作過程を含めて社員さんを巻き込むことをしたかった。

 

事前に世間話の中で「うちの会社は製造業ってこともあってか、内向的な人が割と多いんです」と聞いたので、普段の業務とは違うデザイン、そして本業に関係ない仕事をやってもらいたいという気持ちが当時の僕にはあったのだと思う。

 

 

共同で製作した段ボールの照明

 

左:段ボール製フラワーポット 中央:合板小口みせ 右:配送を連想させるパレットテーブル

 

初めてデザインチームとの打ち合わせの時は、言葉には出さなかったけど「仕事が増える」という否定的な感じを受けたけれど、製作の目途が立って最終完成した時はみんな誇らしげでうれしそうに「これめっちゃ大変だったんだよ」と笑顔で話してくれたことを思い出す。

 

僕も初の試みだったので多少不安はあったけど、この会社の人達の協力で社会的に評価されるデザインになった。ホント感謝でしかない。

そして大阪のプロジェクトだったため、大勢の関西の方と仕事をしている中で気づいたことがある。


「エレベーターで世間話を振ってくる、そしてオチを必ずつけてくる」

偏見かもしれないが、関西人の「言葉のデザイン能力」の高さを知ったプロジェクトだった。そしてみんないい人だった。

 

「パッケージ感あふれる空間」という要望が曖昧な時は、どうアプローチすべきか?僕の回答は曖昧な要望を細分化し、具体的な要望を妄想して解決策を導く提案をする。ということだ。

 

パッケージ会社のブランドを視覚化して、不特定多数の人に「この貸会議室の会社はどんな会社なのだろう?」という好奇心を生ませる。そしてフレキシブルに対応できる会議室にするために移動式ブースを計画する。



「借りるか」「借りないか」の2択しかない貸会議室の特性を、移動ブースによって大人数での時間貸しもできるし、少人数のテレワークスペースとしてもできるので、集客と回転率向上が見込める。

 

to B の場合は、表面的なデザインだけでは数か月で飽きられてしまうと思う。大切なのは深堀したコンセプトであり、そのコンセプトが口コミなる。「人は他人に語りたい」という欲求をつかむということ。

 

「デザイン」の中には「見た目」以外の「考え」や「集客」などの利益を生む構造が含まれていると思っている。

 

店舗を含め、to B に関しては「繁盛する」ということを大前提として考え、その手法として意匠を考えることも必要だと思う。

 

要望を深堀すること。
それは要望を妄想して勝手に解決策をつくること。
この想像力を普段頭の中でやっている人は、是非紙に書いて誰かに伝えることをしてほしい。
それが「コンセプトメイク」という手法であり、デザインを通す武器なので。

 

僕も頭が柔らかい設計者であり続けたいと、この記事を書いて改めて思った・・・

 

今回はここまで。
ありがとうございました。

 

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