2023/11/16
【設計事務所のデザインコラム】#15 売れない商品、造ってみた(キャンプ道具)vol.3/3完結
vol.3は売れないキャンプ道具の完結編。
繰り返しになるけど、
僕は建築以外にキャンプ道具のブランドもやっている。
これが・・・まぁ売れない。
この売れない商品開発をやってる意味や売れない商品自体の意味についてお話しようと思う。
前回のvol.1、vol.2の続きなので良ければそちらを見てからこの記事を見てください。
さて、今回はインテリアとキャンプを掛け合わせた商品のお話。
たとえば住宅設計の場合、室内の居心地、お庭でのくつろぎ方を考える時に「椅子」は重要だと思う。
「座る」という姿勢に対して、いかにくつろげる体勢になるかなど、人間工学的思考で考え抜かれたプロダクトはこの世に数多くある。また意匠性が素晴らしいもの多い。椅子に関しては本当に奥が深く、別の記事で話そうと思うが、椅子のデザインの根底にあるのは快適な座り心地だと思う。
ただキャンプ道具の椅子の場合、座り心地も大事だがドリンクが置けるか、コンパクトにしまえるか、軽いかなど求められるスペックが少し変わってくる。
以前僕がキャンプの定義として「自然を楽しみ、自然を愛す」と位置付けた視点から、僕なりのキャンプ椅子を表現してみたのがこれ。
スウェーデントーチになるスツール
こちらも建築廃材を利用したスツールだ。
椅子は容積をとる。ただデザインが飽きたらすぐに取り変えれるものではない。そういう時はどうするか?
僕の解決策は「燃やす」だ。
これだけ聞くと炎上しそうだが、この椅子はそもそもスウェーデントーチとして造られている。しかも建築廃材の針葉樹を使っているので非常に燃えやすい。室内でも屋外でも椅子として利用でき、飽きたらスウェーデントーチとして新たな役目を与える。
中華鍋を振れるスウェーデントーチ
これは造りもシンプルで廃材も手に入りやすいので、
比較的安くできた・・・が、
本業の建築が忙しく、プロモーションが後回しになった。盛り上がってるときに出すべき、やりたい時がやる時と思いながら時間は過ぎていく。いつのまにか「やりたいこと」が「やらなきゃいけないこと」になっていた。
そしてふとあることを試したくなって僕が出した行動。
商品としては一番売れそうで、お金も時間もかなりかかっているものなのに、おおやけには出さず、NOT CAMPの話をするときにだけ紹介してクチコミだけで知られる存在と位置付けた。
モックバーガーはインスタで1万いいね越え
マッスルスパイスは各メディアからの問い合わせ殺到
そして腰掛炎上はもはやリリースせずにクチコミのみの販売
「知りたい」と「知られたい」について深堀してみたくなったのだ。
表には公表せず、クチコミのみということは僕が直接相手にプレゼンするということ。コンセプトや商品プレゼンは熱がこもる。
結果的にこの商品を非常に気に入ってくれた企業様が腰掛炎上をベースにアレンジを加えたスウェーデントーチを発売したいと連絡があり、その商品開発のデザイナーとして参加することとなった。
「商品はクチコミが大切」とよく言うけれど、誰が言うかによって効果は変わる。商品を愛していて、「売る」より前に「良さを分かち合う」というスタンスは結果的に「売れる」につながるんだなぁって学んだ。
求められるスペックではないものを商品化している。それにより売れないけど違う価値が生まれる。そっちの方が重要とするならば「売れない」が「売らない」に変わる。
見た目ではなく、ストーリーを売っている。コンセプトがしっかりしていれば「売れない」が「売らない」に変わる。
結果的にこのNOT CAMPを話したことがきっかけで、建築デザインの案件が2件決まった。
僕にとっては今でも大切なプロダクトであり、この他にもまだ商品はあるし、アイデアストックはかなりある。
現在スラムダンクのように第一部完としているが、またごく一部のこういう商品が好きな人から熱望されたら、「水曜どうでしょう」のように不定期で商品を出すと思う。次の商品はキャンプと美容を掛け合わせたもので、すでに図面を書き終わっている。
建築家は考えを具現化する具現化系の能力者。特に僕がやってる小規模〜中規模建築、住宅、店舗など色々な業態をやっていると、細部までこだわるのでプロダクトデザインは向いていると思う。
商品開発も建築もデザインアプローチは同じ。
しっかりコンセプトメイクをして価値を造り、それに見合った商品を具現化する。
ただNOT CAMPの弱点は最後の最後まで「高性能プロトタイプ=試作品」のクオリティだったことだ。
NOT CAMPは何度も言うが、
もちろん赤字だ。
ただNOT CAMPメンバーは
結果的に黒字だ。
今回はここまで。
ありがとうございました。
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