2023/11/15
【設計事務所のデザインコラム】#14売れない商品、造ってみた(キャンプ道具)vol.2/3
vol.2も売れないキャンプ道具について話そうと思う。
繰り返しになるけど、
僕は建築以外にキャンプ道具のブランドもやっている。
これが・・・まぁ売れない。
この売れない商品開発をやってる意味や売れない商品自体の意味についてお話しようと思う。
前回のvol.1の続きなので良ければvol.1を見てからこの記事を見てください。
モックバーガーを造りつつ、第2段の商品開発をしていた。
基本自分が欲しいものをベースに考えているのだけど、
「自分が良いと思うもの」が「他人が欲しいもの」とは限らない。
それは理解しているつもりだったが、果たしてこの自己中心的商品を造った時、どんな結果が生まれるかを検証したかった。
当時の僕は健康のため、ダイエットのためにジムに通い始めた。僕の中で一番苦手といっていい筋トレだ。何度もジムに通った経験はあるが、結局会費の垂れ流しでやめていく流れを断ち切ろうと、パーソナルに通い始めた。
マンツーマンで筋トレする中で、相手がいるとやらなきゃいけない衝動に駆られるから続けれる人がいるということを理解したが、一回行かなくなるとやっぱり筋トレさぼり癖が出てしまう。
さぼり癖というのは「楽しくない」からだろう。そしてその原因のほとんどが自分にある。人は誰でも「見栄:みえ」を張る生き物だ。僕の場合、「こんな重さもあげれないのか・・・」と思われたくない衝動で、ジム前日に猛烈に筋トレをする。そして筋肉痛がひどい中、初めまして・・・からのダンベル上げ。当然いつも以上に上がらない。そして諦めてさぼる・・・楽しいことを優先する・・・
このよくわからないスパイラルを断ち切るために、苦手な筋トレを楽しいキャンプと掛け合わせたらどうなるかと考えた。
忙しいビジネスマンが休みの日に、ジムに行くかキャンプに行くか迷うことを解決する商品づくりを考え始めた。
調味料入れダンベル「マッスルスパイス」
「キャンプ場で筋トレしながら料理ができるダンベル」
コンセプト
忙しいビジネスマンはジム行くか、キャンプ行くか迷うじゃないですかぁ。
この2つを同時にできる誰もが求めていたキャンプ道具を開発しました。
その名も「マッスルスパイス」
キャンプ場でむね肉焼くじゃないですかぁ。
毎回薄味だと味気ないからいろいろなスパイスをかけたくなりますよねぇ。
この調味料をかけるという「ふるまい」が自然と筋トレになる調味料入れダンベルなんです。
注意してください。
力任せに振ると、塩が大量に出るので塩分過多です。
腕をプルプルさせながらそっと振ることで、
丁度いい筋トレと丁度いい味付けになります。
また
片側5個、両側で10個調味料が入れれるので、
味変を出来るんです。
男性だったらてっぺんから振りましょう。
上腕二頭筋だけじゃなく、裏側の上腕三頭筋も鍛えられます。
このダンベルは取り外しができるので
普段は家の調味料入れとして使えるんです。
合計10個も調味料があるので料理がさらにおいしくなるはずです。
「キャンプばかり行ってる・・・」とぼやく家族への
言い訳に使いましょう。
時間を大切にする全てのビジネスマンキャンパーへ
時間を無駄にせず、キャンプを楽しもう。
これが僕が話してたピッチだ。
上腕三頭筋を鍛える
「キャンプ×料理×筋トレ」を掛け合わせて「時間」を生む。
何かと何かを掛け合わせることはデザインの基本だと思う。
空間デザインでも同じで、「玄関」と「リビング」を掛け合わせて、玄関を応接室やセカンドリビングにしてしまう。これによって限られたスペースを活用する。
頭を柔らかく、固定観念を外すとなんでもデザインできるようになると思う。「肩書き」を一旦横に置き、クリアな状態でデザインに臨む。
この姿勢が重要だと思うだよねぇ。
この商品を開発した時にひとつ問題が発生した。
プロモーション写真のモデルがいない。
僕を含めて、まわりにいわゆる「マッチョ」がいなかったのだ。
そういうときこそインスタ告知ということで、インスタでモデルを募集した。
世の中にはこういう商品が好きな人もいるもので、マッスルスパイスのイメージに合ったちょうどいいマッチョの方からDMが来た。
モデルとして写真を使わせてもらう代わりに、マッスルスパイスをプレゼントした。この方はうちのブランドのことをよくわかってる。
写真は全てこの方が撮って送ってくれたものだ。
イメージ通りで感謝でしかない。
送られてきた写真
もう一つ効果があったことがある。
ひょんなことから、九州のスポニチに小さく掲載することになった。
発売当日の朝7時からメールが止まらない。
この商品を是非取り上げさせてください!というメディアからだ。
中には「世○谷ベース」の雑誌に載せたいとの連絡も来た。
僕らは焦った。
ノットキャンプの商品は「高性能プロトタイプ」であり、理解のある人にしか売らないからだ。
商品も建築もクオリティを担保して、初めてコンセプトの力を発揮すると学んだ。
そして全て丁重にお断りした。
コンセプトやアイデアだけではだめ。
クオリティだけでもだめ。
両方合わさって初めて世の中に対して「価値」が生まれる。
最初は軽すぎたら筋トレにならないからせめて3㎏くらいの重さにはしたいと思い、念のためおもりのプレートを付けれるように造ったが、結果的に7.4㎏になり、まぁまぁ重いダンベルになってしまった。
商品構成
また片側5個は調味料瓶を付けているのだけど、もう片方はエスビー食品のこの調味料のみ入るサイズで穴あけをしている。
エスビー食品さんの調味料のみ入る穴あけ
これがどういうことなのか・・・
この商品の瓶のサイズが変わった場合、もう使い物にならない。
エスビー食品とは何の関係もないNOT CAMPだが、僕が個人的にこの調味料を愛用して、好きだから選んだ。
我ながらさすが「高性能プロトタイプ」。NOT CAMP商品はあくまで試作品なのだ。c
こうして、世界にひとつだけのニッチなキャンプ道具は、売れそうなチャンスがありながら、それを自ら放棄するという暴挙に出たのである。
売れない商品なのか、売る気が無い商品なのか・・・
ただこの商品も人を笑顔にする。
調味料入れとしては価値は無いかもしれないが、エンタメ性はある。
結局のところ、目先の利益ではなく、マネタイズをどこでするかを考えることが重要だ。
5%の需要にのみ対応するアウトドアブランド「NOT CAMP」
この商品もまぁまぁ高い。
前回も言ったけど
もちろん赤字だ。
今回はここまで。
次のvol.3で一旦完結します。
ありがとうございました。
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